伝えるには、相手を「伝える人」にしてしまう。

「TOC(制約条件の理論)はこんなにいいのに何故広がらないのか?」

こんなことがTOCのシンポジウムで考えられたことがあります。

「TOCは初期投資が要らないし、実践する人にはリスクが少なく、やると必ずいいことが起こる。」
「しかし、何故こんなに伝わらないんだろう?」

シンポジウムの参加メンバーは、TOC的思考プロセスの方法でみんなで考え始めました。

そして、その結論は衝撃的なものでした。

 

「TOCが伝わらないのは、TOCを伝えようとするからだ。」

 

 

「学びすぎ」で相手を置いていかないのが基本姿勢

確かに。。。まずTOCという横文字から入ると、心のシャッターがガラガラガラと降りる人が多い(^-^;;;

そしてこちらが言いたいことばかりを話していると、どんなにいいことでも、どんな面白いプレゼンテーションを作ったとしても、相手は目を閉じて寝てしまいます。

特に伝える側が学びすぎていて、何度か使った言葉や表現に慣れてしまっていると「この言葉で言うのが当たり前なんだ」とばかりに、相手を見ずに言葉を発してしまいます。

それじゃ、確かに伝えようとして熱くなればなるほど伝わらないですね!

どんどん相手が置いていかれてしまう。「またあいつ、いらんことを学んで来たよ」みたいな感じですね。

この罠にはまらないようにするには、いつも新しい場所に身を置いて置くのがいいと感じています。

前回の記事で紹介した年少の「リバース・メンター」を置くのもいい方法ですね。
過去記事:「先生は次世代から」リバース・メンターを味方につける

第三者(人や書いたモノ)を立てるっていう「ABCの法則」っていうのもあります。
過去記事:伝わらない時は、自分で話さない

うん、この2つでだいぶいい線まで来ていると思うのですが、もう一息。

相手を「納得」させるのではなくて「欲しい」「やってみたい」と火をつける環境づくりが必要ですね。

 

相手の「体験」と周囲の「楽しそう?!」を創る

先日、いいきっかけをいただきました。あるお役所さんからTOC研修のご依頼をいただいたのです。

営利目的の企業さんと違ったお役所さん。明らかに「儲け」を目指しているわけではない。

全くはじめての場面になると、新たに伝える表現から考え直さないといけません。

お役所さんの目指す「成果」は何か?

TOCがはじめての300名が対象。普段2日間やるTOC研修と違って、90分で同じ内容の講座を1日で3回行う。

何が伝えられるのか?

準備期間は短いですが、とにかく相手を考え尽くします。たくらみの第一歩は「相手を考え尽くす」こと。

「普段、どんなお仕事をされているんだろう?」
「どんなことなら、職場に戻ってやってみようと思ってもらえるだろうか?」
「ただ教室形式で聞いている研修では何も起こらないだろうな。」
「どんな状況でも、手足を動かすゲームで”体験”してもらいたい。」

そうだ。TOCのことをクドクド伝えずに、仕事に直結することを体験してもらえればいいんだ!

 

専門用語はどうでもいいです

既にTOC研修と名前が付いていたので、最初にこう言うことにしました。

「セミナーのタイトルにあるTOCって何?って思って今日お越しかと思いますが、TOCって言葉はどうでもいいです。」

「皆さんのやることが減って、何だか楽しくなって、成果が出ることを体験していただきます。」

90分のうちに3回ゲームを行い、その解説を中心に行いました。

やったことは、100人での整列ゲーム。(画像はお役所さんのものではありません😊)

指示命令集団と指示ゼロ集団の2パターンを試して、何だかワイワイ集団が楽しくなって、コミュニケーションが取れて、しかも仕事が早く終わる状態を体験していただきます。

そして、マルチタスクゲーム。やり方はこちらの記事を参照。
過去記事:スピードアップは、手を早く動かすことではない

あれこれ同時に手をつけてると、結局どれも遅く終わって残業が増える体験をしていただきます。

最後に、お役所さんのために考え出した稟議書ゲーム。

まずはキャベツを切る事例の動画を見てもらいます。

え? 1個づつ切る方が早いの? 9割の人が驚きます。
過去記事:完了を増やすには「1つづつ、1つづつ」

でも。。。いやいや、実際の仕事ではそうは行かないよね〜って、信じない人も多いです。

そこで、実際の仕事に近いことをやってもらいます😊 稟議書のような書類回覧です!

横1列が8名いるので、8枚の白紙2セットを準備。

1回目は8枚に自分の名前をまとめてサインしてから隣の人に渡す。
2回目は1枚書いたらすぐに隣の人に渡す。

すると。。。

1回目の最も早い列の終了時間は 5分00秒。
2回目の最も早い列の終了時間は 1分30秒。

その差は歴然!

しかも1回目のやり方では、稟議が降りて実行するまで全ての案件は5分待たないといけない。
しかし2回めでは1つ目の案件は最速30秒で稟議が降りて実行に移せる。

実際に手を動かしているので、仕事に戻って書類を回す時に、ちょっと待てよ?!と考えていただけるきっかけになれば嬉しいなと思います。

 

相手には、次の人に伝えてもらう

ここで本当に考えるのは、

研修に来られなかった、残り100名の方々

です。

直接お話できる機会はありません。そうすると、今回の受講者の方々に「伝道者」になっていただく必要があります。

300名の方の1人でも2人でもいい。少しでも研修の成果をニコニコと楽しそうに話す人が出てくれば嬉しい。

研修で手を動かしたことを、仕事で同じようにやってみると何だかうまくいくようになったよ。早く仕事が終わるようになったよ。楽になったよ、楽しくなったよ。

こんなふうに言ってもらうのが、本当の狙いです。

え?何を聞いたの? どんなことしたの? そこで受講できなかった人が興味を持ってくれて、聞かれた人が説明をしだす。

聞いた人も聞かれた人もお互い学びます。

ここで初めて、本当に伝わったことになります。次世代につながることになります。

伝えるためには、相手を「伝える人」にしてしまう。

どこまでできるか、どこまで成果があったかはすぐにはわかりません。しかし相手の向こう側にまで伝えようとたくらむことが、結果的に目の前の人に強く伝わるはずとたくらみ屋は信じています。

 

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投稿者プロフィール

Shigeo Morimoto
Shigeo Morimoto
1966年大阪市生まれ。革新の好循環を起こす「プロの素人」。株式会社こきょう 代表取締役。「教えない」企業研修で何故か良くなってしまう。そのためにTOC(国際認定ジョナ資格)、MG(西研究所認定インストラクター)、20年のEC業界経験で築いたご縁と、大学で河合隼雄氏に学んだ臨床心理学を駆使。

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