あるからと言って、使わなくてもいい。

「大きな山は小さく崩す」という金言があります。私がここ数年で、現場改善で最もたくさん使った言葉です。

・仕入れをまとめて買いすぎている
・営業でまとめて仕事を取ってきすぎている
・商品アイテム数を持ちすぎている
・在庫をたくさん持ちすぎている
・途方にくれるような大きな問題がいきなり起こる

こんな時に、「大きな山は小さく崩す」と何度唱えたでしょうか。仕入れを小分けにしたり、大きな問題の中間目標を設定してみたり。

多くの場合、肩の荷がすーっと軽くなって実際に仕事がうまく行ってしまうのです。

もう5年ほど続けさせていただいてるTOC研修(ソフトパワー研究所さん開発のダイスゲーム)では、これをゲームで擬似的に体験してもらいます。

そして最近ではすぐに答えをお伝えせず、参加者の皆さんが自分たちで知恵を集めて困難な状況を脱してもらうようにしています。

ほとんどの場合、ほぼ正解に近い方法を参加者自身が編み出します! ゴールドラット博士が何年もかけて構築したことを15分の制限時間で! これは本当に素晴らしいことです。

こういう様子を見ていると、講師が安易に答えを伝えてしまうのは本当に罪だと思います。言われたことは自分の実にならないけど、自分で考えだしたことは本当にできるようになるからです。

 

さて「ほぼ正解に近い」という表現をしました。それはまたほとんどの場合、人類共通にあるんではないか?とも思われる「壮大な思い込み」がちょっと邪魔をするのです。

それは。。。

「あるものは、使わないといけない。もったいない。」

この思い込みです。

例えば「在庫の大きな山」という問題に対してゲームでどのような改善策を取るかというと。。。

「そもそも大きな山にならないように人材を減らしたり、機械を減らしたりする。」

この方法を考え出すことがほとんどです。

 

これが不正解ではありません。80%くらいうまくいくのです。根本問題に対処しているわけですからかなり状況は改善します。

しかし実際のリアルの仕事の場面になると、なかなかうまくいかない。だって機械を撤去したり、人員配置を変えたりっていうのは結構苦労を伴います。

結果、ゲームでは改善してもなかなか現場では動き出せない。。。

これは「あるものは、使わないといけない。もったいない。」という思い込みが邪魔をしているのです。「だから減らしたりなくしたりすればいい。」

このことに、私はピーターパンという千葉県の大人気パン屋さんが、常に焼きたてのパン(30分以内に焼いているパン)をお客様にお出しして大成功している事例を見て気が付きました。

大成功ってどのくらいかというと「通常のパン屋さんの10倍位売り上げる」くらいです。

ピーターパンは大人気パン屋さんですから、たくさんパンを焼きます。だから窯もフル稼働しているはず。。。

と思って見ると、実は違う! 人気のカレーパンの揚げ釜などを見ると。。。

「釜の半分しか使っていない。。。」

何故なら、全部使うとたくさん一気に揚がっちゃうから冷めてしまって、この店のウリになる「焼き立て」にならないのです。

あるからと言って、使わなくてもいい!

何てシンプルなんでしょう。機械を撤去する必要もなければ、人に辞令を出す必要もありません。

仕事がない状態ができ、余裕ができます。
余裕ができると、周りを見渡すことができます。
あの人は忙しいけど私も忙しいから手伝えない、なんてことがなくなってきます。
結果、コミュニケーションが生まれます。

他店は「あるものは、使わないといけない。もったいない。」と思い込んでいるから、こんなに簡単なことが真似出来ないのです。

 

話が違うかも知れませんが「あなたはそんなに才能があるのに、使わないのはもったいない」という言葉を聞くことがあります。

私は、使う使わないは本人の生き方でいいんじゃないかなぁと思います。

世間的に役に立つと思われる才能を使ったばかりに、自分を疲弊させてしまう。。。なんてこともよくあります。

「使わなかった才能」は、いつでも出せる「引き出し」でいいんじゃないかな。

そんなちょっとゆるみのある人生の方が、楽しそうですね。

(2017年7月23日 森本繁生の個人ブログに掲載した記事をリライト再掲)

 

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投稿者プロフィール

Shigeo Morimoto
Shigeo Morimoto
1966年大阪市生まれ。革新の好循環を起こす「プロの素人」。株式会社こきょう 代表取締役。「教えない」企業研修で何故か良くなってしまう。そのためにTOC(国際認定ジョナ資格)、MG(西研究所認定インストラクター)、20年のEC業界経験で築いたご縁と、大学で河合隼雄氏に学んだ臨床心理学を駆使。

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