「何もしない」が許されない会社は衰退していく

数十年間ずっと素晴らしい利益を出し続け、社員さんの9割が持ち家という会社がテレビ番組で紹介されていました。

「いやー、羨ましいですよね。」
「頑張ってるんだから当然ですよね。」

頑張るから儲かる、頑張らないと儲からない。

世の中ではとっても当たり前の前提として考えられているように思います。働かざる者食うべからず!

しかしTOC(制約条件の理論)を紹介している「ザ・ゴール」には、このような衝撃的な言葉があります。

「面白いことを教えてあげよう。従業員が手を休めることなく常に作業している工場は、非常に非効率なんだ。」

これはどういうことでしょうか? 頑張っている会社はダメなの? ずっと頑張り続けると倒産するって? 本当に?

 

よく企業さんの評価で「稼働率」というものがあります。100%動いていると、とっても頑張っているね!って周囲に評価されます。もしかしたら給料も上がるかも知れません。

そこで、ザ・ゴールに紹介されているシミュレーションゲームで実際に稼働率を測ってみました。

稼働率っていうのは、100働ける時に100仕事すると100%。100働けるのに50しか仕事しないと50%っていうことですね。

サイコロのゲームで1日に働ける数を決めるゲームでしたので、サイコロが6出た時に、6仕事ができれば100%。サイコロが6出た時に、3しか仕事しなかったら50%っていうことで計算しています。

 

まずこれは「みんな同程度のバランスの取れた能力を持って、同じように頑張って仕事をした会社」の稼働率表。

7人の人に全員稼働数を記録してもらって表にしました。100%は緑、75〜99%は黄、それ以下は一般的には「サボってる!」って言われるので赤で表現してみました。

いやー、みんな頑張ってますね。赤は1つしかない。頑張ってるからいい会社だろう! 。。。と思いきや?!

この会社は決算すると、一番左の黒い文字が示すように、経常利益が赤字の会社でした。

実際にシミュレーションしていた人達も「全然思うように仕事ができず、お客さんの要望通りに納品できずにクレームの嵐。赤字続きになるだろうから、この会社はやがて倒産するだろう。」という感想でした。

 

一方、個々の能力がバラバラでアンバランスですが、「最も仕事が流れにくい場所のペースに合わせて仕事をした会社」を作ってみました。

なんだって?! 一番遅いところに合わせるって? そんなんでうまく行くわけないじゃん! って思ってしまいがちですが。。。

ところが、この会社は同じ表の緑の文字のように結構な黒字会社。

なんと、稼働率は真っ赤っ赤です!

100%頑張っているのは、一番仕事が流れにくい5番の部署だけ。他は30〜50%のユルユルの仕事?

シミュレーションした人たちは「スルスル仕事が流れて、お客さんにもちゃんとすぐに商品がお届けできて、儲かって時間のあるいい会社!」っていう評価でした。

実はこれがいい会社なんです。

利益出てるのもそうだし、特急の仕事が入っても余裕があるからすぐにできます。スピードが早い!

チームワークも発生します。5番が大変、自分たちはゆるゆるだから手伝えるよ!っていう感じですね。

君も大変だけど、私も大変! だったらチームワークは発生しません。自分のことで精一杯。これはみんな自分のことで一生懸命頑張っている会社の落とし穴ですね。

「稼働率主義」はダメな会社を作る!っていうのは、数字的にもチームビルディング的にも実証されてしまうのです。

 

暗黙の「評価」が、余計な仕事を作る。

では、稼働率で評価しない「いい会社」をもうちょっとしっかりイメージしてみます。

大部分の人の稼働率が30〜50%っていうことは、「何もしていない」時間が半分以上あるってことですね!

皆さんは自分が何もせずに、勤務時間の半分以上の時間を過ごすことを想像することができるでしょうか?

「何もしなくていい、嬉しいじゃない!」と思える人は、「何もしない」ことが評価されている集団・会社だと思います。

しかし多くの人は

「いやー、サボっているように見られていやだな。」
「職場の人間関係悪くなりそう。」
「そんなことしたら給料下がるし。」
「次の人事異動で飛ばされるかもしれない!」

こんなことを思うのではないでしょうか?

これは稼働率が直接給料に関わっていない場合でも、暗黙の評価で「稼働率主義」が厳然と存在するっていうことですね。

冒頭に書いたように、考えるまでもない「世の中ではとっても当たり前の前提」として存在している大きな壁ですね。

実はここの「当たり前」という思い込みを乗り越えていくことが、いい集団・いい会社になるポイントの一つです。

 

「何もしない」を実践するには「鮮度」に視点を置く

大手製造業の会社ではこのことをよく知っているので、「仕事がないときは余計な仕事を作らずに何もしない」ことが褒められるって聞いたことがあります。

でも、もっと身近にそんなことをしてる事例はないかな? と思っていたら、ありました! というか、気づきました!

大阪が誇る「551の豚まん」の551蓬莱さん、百貨店の中にあるイートインで、ランチを食べていた時のことです。

あ! 料理人さん達が手を動かしていない!

そりゃそうです。ランチタイムも終わりに近づいてお客さんが入ってこなくなった時間。注文が少なくなってきているから、当然料理も作らないのです。

料理だったら「当たり前やん!」ですよね。

絶対作りたてのほうが美味しいに決まってるし、作り置きなんかしても美味しくないし、第一これからお客さんが来てそのメニューを頼むかどうかもわからない。

しかし飲食店でなかったら「腐らないから」って言って、どんどん在庫を作っていったりしてないでしょうか? 在庫がなくても、TODO、やるべき仕事やスケジュールをいっぱい作っていってないでしょうか?

すると、こんなことが発生するわけです。

仕事山積み、何からやっていいかわからないの大混乱と悪循環、不良在庫として資金とスペースを圧迫。

形あるものないものに関わらず、鮮度が落ちて腐っていき、誰も必要としないものになっていく。

それを防ぐには、料理人と同じように「鮮度」に注目すればわかりやすいです。

よく心のこもったおもてなしをしたい、血の通った商売をしたいという言葉を聞きます。しかし仕事山積みでてんてこ舞いしていては、そんな立派な志もとても実現できません。

その志も「鮮度」に注目して、余計な仕事を入れないことで実現しやすくなるのではないでしょうか。

 

「何もしない」の2種類 「待つ」と「侍る」

もう一つ。料理人さんの写真で注目したいことがあります。

それは、手は確かに動かしていないのですが、目は鋭く何かを見ているということです。

これは確か注文の様子とか人の流れ、メニューの方向を見ていたと思います。つまり全体で起こっている状況を集中力を持って観察しているのです。

これは八方気を配って「侍る」という行動です。

何もしないで待つ。八方気を配って侍る。これはどちらも英語で「Wait」と言われます。飲食店での「ウェイター」は、後者の侍るという意味で使われます。

一見何もしていないような「Wait」にも2種類あるということですね。

 

次世代の集団はこの2種類の「何もしない」を明確に区別し、「侍る」ことを知る集団がうまくいくように思います。

「何もしない」のいい面がきちんと捉えられますように!

 

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投稿者プロフィール

Shigeo Morimoto
Shigeo Morimoto
1966年大阪市生まれ。革新の好循環を起こす「プロの素人」。株式会社こきょう 代表取締役。「教えない」企業研修で何故か良くなってしまう。そのためにTOC(国際認定ジョナ資格)、MG(西研究所認定インストラクター)、20年のEC業界経験で築いたご縁と、大学で河合隼雄氏に学んだ臨床心理学を駆使。

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