足し算からの逃走

たくらみ屋にご相談いただく企業プロジェクトは、ほとんどが「引き算」の仕事です。

企業をシンプルにするシンプルプロジェクト。最近は要らない仕事を抜き取るっていう意味で「ジェンガプロジェクト」って名称でも行われるようになってきました。

引き算が求められていることに気づいて、改めて「たくらみ屋は引き算が得意なのかも知れない」って自分たちを捉え直しました。

そう言えば、指示ゼロ経営なんてのは引き算の最たるもの。指示・命令・管理・ルールをゼロにしていくのですから。

TOCも「制約条件、ボトルネックに焦点を当てると劇的に良くなる」ということは、逆に「他はほとんど見ない」っていうことです。「やめる、減らす、抜く」、引き算のの実践そのものだったです。

 

引き算が求められる背景

何故、これほどまでに引き算が求められているのでしょうか?

それは、ほとんどの企業がこれまで足し算しかやってこなかったからだと思います。

商品を増やす。企画を増やす。新しいことを学ぶ、会社を大きくする。。。

これら自体は悪いことではないですが、自社の器の中でいっぱいになっても、「売上を上げなきゃ!」「他社に負けたくない!」でまだまだ詰め込もうとしているのです。

そのうち溢れ出して、爆発しそうになって「これ以上詰め込むと自分で自分を潰してしまう」と気づきます。

そして気づいたら、引き算の方法は何も知らなかった。。。足し算ばかりやっていたから、やり方がわからないのです。

引き算が求められるもう一つの理由は、組織は加減乗除で変容していくからです。

「加減乗除」の変容については、楽天大学の仲山進也学長が書籍でうまく表現されていますので、是非参考にしてください

組織にいながら、自由に働く。 仕事の不安が「夢中」に変わる「加減乗除(+-×÷)の法則」

たくらみ屋が現場経験をまとめて描いた「イノベーションを育む流れ」でも、その様子を表現しています。(クリックで拡大できます)

足し算の次は引き算をして、自社の存在意義にそぐわないサービスを削ぎ落とす。

引き算すれば、自社が見えやすくなり時間ができて、文殊の知恵の掛け算が起こりだす。

文殊の知恵が大きく発展すると、やがては分社化のように割り算にたどり着く。

こんなふうに組織が変容するとすれば、足し算を散々やったあとの引き算は、組織にとって必要なことなのです。

 

Step1:足し算から全力で逃げると覚悟する

足し算が限界だと知ったら、「足し算からは全力で逃げる!」と覚悟を決めることです。

足し算からの逃走。ここから引き算が始まります。

これまで経験のないことだから最初は怖いと感じます。

具体的には今まであった儲からない受注を断ったり、上司のやれっていう命令に「それはやりません」って伝えるイメージを持っちゃうと思います。

そりゃ怖いですよね! 「断らないのが我社の姿勢です。」「言われたらやるしかありません。」などと言って実際すっごく抵抗されるところです。

でも、ここが抵抗なくするっと通ることができたら良くありませんか?

そのために2つの方法があります。

ひとつは、ひところ流行った「スルーする力」を身につけること。

これをやってね、はいはい〜って答えておきながらやらない(笑) とてもいい技なんですが、残念ながら万人にできる技ではありません。

もう一つは、相手と「やめるのがいいよね」と合意できる道具を使うこと。こっちは多くの人ができます。

道具は、暗闇を進むためのヘッドライトと命綱に当たる簡単な理論です。少し試してうまくいく経験を持つと、勇気を持って進むことができます。

ただし、道具は意思を持って使わないと役に立ちません。まず「足し算から全力で逃げる!」と決める。その上で次のステップに進んでください。

 

Step2:1点だけで引き算する

最初は、ボトルネック1点にフォーカスして引き算します。

足し算から引き算へ。企業で歴史的とも言える大きな転換には、失敗が必ず起こります。

しかし失敗は、必ずしも損失に結びついているわけではありません

失敗の損失を最小にすることはできます。経済的損失がなるべく出ないようにすることもできます。

損失を最小にするには、何でもかんでもやめないこと。変えるのは重要な1点から始めるのです。

引き算するポイントは「ボトルネック」です。

まず業務の流れを図式化します。こんなくらいに簡単でいいです。

 

何人かで30分くらいかけて業務フロー図を描いてみると、もっとわかりやすい。

すると、業務が集まって山積みになっているところが視覚化されてきます。その集まっているところに焦点を合わせ、業務を引き算するのです。

「この仕事、Aさんがやらなくてもいいんじゃないの?」
「じゃあこれはBさんにやってもらおう。」
「いや、そもそのこの仕事は必要? なぜやってるの?」
「前からやってたから。。。」
「今はもうやめてもいいんじゃない?」

こんな感じでやめていけると効果が高いです。みんながネックだ!ネックだ!って言っていたところの仕事が減って、パフォーマンスが上がるわけですから。

あ、引き算っていいこと起こるかも!っていう雰囲気が出てきます。

全社でできれば効果絶大ですが、人数が多い場合は部署ごとでも構いません。まず「引き算の土壌」を作ることが大事です。

 

Step3:小さく崩せばうまくいく

例えば上の「撮影がボトルネック」の場合、たくさんの商品が入荷してくるから撮影が詰まるってことですよね。

しかし「商品入荷をやめろ!」これは無謀ですね。売上が本当になくなっちゃう。

こんなふうに「これ、丸ごとやめるの大変だよね〜」っていう図が出てきた時に、思い出して欲しい言葉があります。

「大きな山は小さく崩す。」「小さく崩せば上手くいく。」

ポイントは「それは何?」っていう質問です。「商品入荷って何?」みたいな。

「商品入荷は商品入荷だろう」って答えも返ってくるかも知れませんが、多くはこんな感じにみんな分析してきます。

「まず、一番売れ筋のAっていう商品だろ。」
「つぎに、季節物のBっていう商品ですね。」
「あの売れてないCっていう商品もあるなぁ。」

「結局全部捨ててるDって商品もあるんじゃない?」
「え? それも全部撮影してるの?」
「そりゃとんでもないね!」

こんなふうにみんなで合意できれば、引き算に積極的に取り組めるようになりますね。

たくらみ屋は「プロの素人」であろうとしますので、子どもみたいに平気でどんどん聞きます。

「教育って何ですか?」
「営業って何ですか?」
「会議って何ですか?」

すると不思議なことに、大きな山が小さく崩れてくるのです。

 

「やることがいっぱいだ」「仕事が山積み」と言い続けて長い人は、是非覚悟を決めて引き算の土壌づくりに取り組んでみませんか?

引き算の先には「文殊の知恵の掛け算」「分社化の割り算」などと、なかなかワクワクする世界が待ち受けています。足し算で止まっておらずに、逃げ出してみませんか?

今日から、引き算でうまくいく人が増えますように!

 

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投稿者プロフィール

Shigeo Morimoto
Shigeo Morimoto
1966年大阪市生まれ。革新の好循環を起こす「プロの素人」。株式会社こきょう 代表取締役。「教えない」企業研修で何故か良くなってしまう。そのためにTOC(国際認定ジョナ資格)、MG(西研究所認定インストラクター)、20年のEC業界経験で築いたご縁と、大学で河合隼雄氏に学んだ臨床心理学を駆使。

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