教育とは先生の劣化版を作ることではない
たくらみ屋のメンバーは明文化された経営理念を作っているわけではありません。というか、作ろうとは思いません。
時代の流れが早い今、過去に形にしたことがたくらむ時の足かせになるからです。
しかし、ショッカーが「イー!」っていうくらいの「合言葉」はあります。
今の合言葉は「青天井!」です。
青天井の才能で先人の知恵を自力で考え出す
最近はたくらみ屋メンバー自身が思ってもみない才能が発揮されることが多くなって、とても手応えを感じてきています。先日行われた大阪家族MG(経営シミュレーションゲーム研修)では、たくらみ屋史上最高と言える場面がありました。
とくいっち先生こと得居裕江が、3人の小学生家族を含む8名の参加者に「世界一安くて美味しいプリン屋さんを救え!」というお題を出します。美味しくて売れるけど経営がうまくいかないオーナーパティシエに、経営アドバイスをしてもらう設定です。
正解はありません。そして、正解を求めません。
とくいっち先生は「わかる人〜?」ではなくて「こうかなと思うことを教えてください」と伝えます。
そして誰もが遠慮なく考えたことを言える雰囲気作り、場作りをします。
大人や先生の考えで「それは違うでしょ」「それはダメだ!」などと言って発想の邪魔をしない。
天井を設けない。決して潰さない。青天井に伸ばす。
すると、どうでしょう。
ただちか君は1万円のプリンを売ると提案!
価格を上げることは大人も考えていたけど、その値上げ幅はせいぜい100円台。2桁違う発想に「そこまでは考えなかった!」と大人たちは仰天。
とくいっち先生はもっとびっくりしています。何故なら、自分が秘かに用意した実際にある最高値のプリンの事例が1万円プリンだったから!
なお君は、価格だけでなく、原価が下がった場合、販売数が上がった場合の3つのシミュレーションをして、原価を下げるのは結局良くないことを提案!
これはMGで大人たちが学ぶ利益感度分析そのもの! 自分で考えちゃったの!? すごいじゃない! そんなの僕も習うまで考えもしなかったよ。
さくらちゃんは2つの図を書き始める。。。「安いプリンと高いプリンを売ります。すると、この2つの利益を合計するとこうなって。。。」
これはMGでもシニアレベルの商品ミックス! STRACⅡ! MGたった3回目のさくらちゃん、それは僕らにとっては発明レベルの凄いことだよ。
3人の発表は、誰もまだ教えていないことばかり。
聞いていた親たちは、自分たちをはるかに上回る発想にただただ呆然。自分のを発表するのが恥ずかしいくらい。。。
発明レベルで発想する才能が、人にはそもそも備わっているんですね。
だから、先生は自分の言う通りに動くコピー、劣化版を作ろうとしてはいけないと思うのです。
大人は頭が固いっていうのも、頭が固い考えかも?!
いやー、子どもの染まっていない才能は凄いね!と感心しますが、ちゃんと才能を発揮する場作りができれば、大人もどんどん驚きの才能を発揮するのです。
先日、ある会社で社内TOC(制約条件の理論)研修をやりました。
2日間の研修の最後、会社の全体業務フロー図を作って全員で考えました。「どこが会社のボトルネックか?」
1時間半の議論の末、ようやく「お客様の待ち時間が多いここではないか?」という業務に議論が集中してきます。そのボトルネックに対して、現在入れすぎてしまっている仕事をどうコントロールして入れるか?
ここで予定時間が来てしまい、一旦終了の合図をします。しかし社員さんは誰一人、終わったという顔をしていません。
「15分後にもう一度集合!」
すぐに社員の皆さんで延長戦が始まりました。こんな面白い場面、私も見逃すわけには行きません。
お!今まで黙っていた社員さんが後ろからホワイトボードを持ってきてまとめはじめた! 自分でできることを考えてする、これは自律的集団ができてきている証拠。
社長が「何か喋ったほうがいいんですか。。。?」と小声で話しかけて来ます。「今、一番いい場面です。見ていてあげましょう。」とお話します。
社員さんたちは、新しい学びの社内への落とし込みに迷いながら、戸惑いながら、対処するボトルネックとそれに対する仕事の入れ方を決めて行きました。
「実際にどうするか?」試す店舗と時期も決定していきます。
「何をもってよくなったという指標が欲しいね。」
そして、とうとう行き着きました。
「お客様の待ち時間が削減できたか。その結果、お客様単価はアップしたか。この2つを指標としよう。」
みんながウンウンとうなずきます。「それなら、お客様のイライラも減るし、社員にも余裕ができて満足度も上がる。」
見ていた私は感激しました。「すごい、考え出しちゃった!」
私達が大切にしている先人が考えた指標「MQ/h」というものがあります。これはつまり時間あたりの稼ぐ速度。
社員さん達が言っていることはこれと同じでした。
つまり社員さんたちは、先人が考えた指標を自分たちの現場に即して自分たちの力で考え出したということなのです!
私は講師ですからこのことを何年もかけて学んだのですが、会計もTOCも初めて聞いた人たちが、2時間で自分たちだけでこの指標を考え出して実行に移そうとしているのです。
本当に素晴らしい瞬間でした。
才能は、見つけてびっくりして笑う!
私が貴重だったと思うのは、社長がほとんど何も言わず「ただ居るだけ」で見守った姿勢です。
「社長が外部講師の研修を2日間離席せずに居たのは奇跡的なことです!」
と研修を企画したマネージャーが伝えてくれましたが、その社長はずっと社員さんが発揮する才能に興味を持ち「居る」というお仕事を続けられたのです。
会議中もほとんど口を挟まず聞いています。よく社長にあるような、座って腕を組んで目をつぶって聞いているような姿勢ではない。みんなの言うことに興味を持って聞いているのです。社員さんたちが知恵を出すままにしていらっしゃったのです。
その結果、社員さんたちは自分たちで自分たちの指標を作り出した。社長に言われたものではなく、自分で作ったものは自分で守ります。
これは、米澤晋也の提唱している「指示ゼロ経営」の姿そのものです。
社長は自分のコピーを作ろうとは思っていませんでした。社長のコピーは社長の劣化版となり、社長以上にはならない。会社はどんどん劣化していきます。
しかしひとりひとりの才能を青天井に開放させて、そこで文殊の知恵の掛け算を起こすと、会社はどんどん生命力を持って進化していくのです。
教育とは先生の劣化版を作ることではない。
そして才能を信じるというちょっと義務感めいた言葉は使う必要はありません。信じるとか信じないは、意識してできることではありませんよね。
ただ、人間の才能の素晴らしさ発見し、びっくりして笑ってしまう。それを楽しもうではありませんか。
合言葉は「青天井」です!
☆合わせてぜひこちらもご覧ください
→ 過去記事:先生を軽く超えてもらうのが教育
投稿者プロフィール
- 1966年大阪市生まれ。革新の好循環を起こす「プロの素人」。株式会社こきょう 代表取締役。「教えない」企業研修で何故か良くなってしまう。そのためにTOC(国際認定ジョナ資格)、MG(西研究所認定インストラクター)、20年のEC業界経験で築いたご縁と、大学で河合隼雄氏に学んだ臨床心理学を駆使。
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・次の一手がわからない。
・問題がたくさんありすぎて、何からやっていいかわからない。