「人はパンだけで生きるものではない」という時代が本格的に到来した

商売は人の営みだから人間に精通することが大切だと思います。
「人間とは?」…う〜ん、これがまた複雑で「これだ」という単一解がないものです。
だからこそ商売は面白いんだけどね。

人間に関する研究は古くから行われてきましたが、ビジネス界において最も影響を及ぼしているのが、いわゆる「経済人モデル」です。
「人が仕事をするのは、賃金という経済的報酬によるものである」という考え方です。

これは20世紀初頭にテイラーが提唱した「科学的管理法」に顕著に表れています。
簡単に言うとニンジンをぶら下げて人を動かす方法です。
具体的には賃金・報酬制度によりモチベーションをコントロールします。
これが工業社会では抜群に成果を上げました。

結婚の条件に、身長や年収などの「スペック」を優先する女性は経済人モデルの落とし子と言っても良いでしょう(笑)

バブル期に僕の先輩(女性)がドラゴンボールを読みながら「年収が分かるスカウターが欲しい」と言っていましたが、僕は「経済人モデルを判別するスカウターが欲しい」と思いました。

ところが世間には経済人モデルで説明がつかない意思決定をする人がいます。

以前に、ある会社…債務超過に陥っている会社を「意欲的に」継いだ人がいました。
多額の負債を抱えていて、周囲の人は相続放棄をすると思っていたのだから驚きです。
継いだのは「次男」の方でした。
なぜ継いだのか?

承継が終わった時にこうつぶやいたそうです。

「ふう、これで父親に認めてもらえる」

福島県浪江町にある新聞店は、福島第一原発の事故による避難指示のために商売ができなくなりました。

取引先の新聞社は別の区域を斡旋したのですが、それを断り、避難指示が解除されてから配達を再開しました。
住民が減り、わずか80世帯ほどに配っているそうです。

「自分を育ててくれた町に恩返しがしたい」という動機からです。

イエス・キリストは「人はパンだけで生きるものではない」と言いましたが、どうやら経済人モデル以外の動機で動く場合が本当にあるようです。

僕は「人類は次なる進化の課程にいるのではないか?」と考える事があります。
環境が大きく変わっているからです。

例えば、内閣府の調査によるとモノの豊かさよりも心の豊かさを求めると答えた人の割合が6割を超えています。

心の豊かを創造するのはとてもクリエイティブな仕事です。
ところが、内発的動機づけ(他人からのコントロールではなく自分の中から湧き上がるヤル気)の研究から、報酬で人を動かすと創造性と自発性が低下することが分かっています。

「報酬が実質的に創造活動を無力化する」
どうやら経済人モデルでは解決できない局面に来ているようです。

僕は、経済人モデルが完全に終わったとは考えていませんし間違いだとも思っていません。
「稼ぐ」という意欲は事業推進のエネルギーです。
しかし、今の時代においては稼ぎたければ経済人モデルではない、新しいモデルに立脚する必要があると考えているのです。
それは「売りたければ売り込むな」のようなパラドックスです。

悩ましいですが、悩むと人は成長します。

こうした環境変化が、人類が進化するための「天のたくらみ」のように思えてくるのです。

進化の話は僕の妄想ですが、100年以上続いてきた管理法に限界が来ていることは間違いないと思います。

人間に関する研究と理解が欠かせませんね。

それでは今日も素敵な1日をお過ごしください!

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