課題の分離で流れを変える TOC × 心理学その1

自分の課題・他者の課題

ボトルネックというキーワードがあります。一番流れが詰まりやすいボトルネックが成果を決めているというTOC(制約条件の理論)の考え方です。

これはとても有益な考え方であることを実感し続けています。

ボトルネック1点にやることを集中できて、余計なことをせずに済みます。仕事はもちろん日常生活にも簡単に応用できて、成果はもちろん人間関係の「和」も創り出す余裕も生まれます。

ところが、いつもうまくいくとは限りません。ボトルネックの対処に常に付きまとってきた言葉があります。

 

「そうは言っても。。。」

そうは言ってもお金がない。そうは言っても時間がない。そうは言っても抵抗がある。そうは言っても決まりごとがある。そうは言っても。。。

理屈ではわかるんだけど、実際はできない。

これが常に付きまとうのです。

根っこの問題点・病巣を発見しているにも関わらず、それに対して何かすればとても効果があると分かっているにも関わらず、一歩踏み出せない。

つまり、ボトルネックをへの対処を阻む、もっと大きなボトルネックがあるのです。

そしてそれは人の心の中で起こっている方針の制約、心理的な課題であることが多いのです。

 

やらなくていい仕事って何?

ボトルネックを活用するには順序がありますが、まず簡単にできるのは「余計な仕事を取り除く」。

ボトルネックをすぐに広げることは考えずに、詰まっているゴミを取り除く。図で描けばこんな様子です。

赤の「やらなくていい仕事」をやめると、その分成果を決めているボトルネックに仕事が溜まらなくなりますね。本来の仕事が流れるようになり、会社ならすぐに業績が改善したりします。

とっても簡単に見えますが、ここで問題になるのが。。。「やらなくていい仕事」って何?

多くの人がここで躊躇します。どうやってそれを決めたらいいのかがわからない。

ここで役に立つ考え方の一つに「課題の分離」があります。

 

課題を分離する

淡路島で農家をしている野口ファームさんは、お子さんがおかわりしたい野菜を作りたい!のコンセプトで大人気の農家さん。たくらみ屋の仲間たちにもファンが多いです。

しかしコロナ禍で納品先の多くの飲食店が営業停止。農業イベントも開催できなくなり、多くの野菜が売れ残ってしまうピンチに見舞われました。

そこで野口さんは、困りごとを書き出して整理。周囲の助けを借りて、きちんと困りごとを表現して根本原因から構造化してみたのです。

するとここで、いくつか「考えなくてもいい問題」が浮かび上がってきました。

・コロナ ← 自分では対処できない
・農業イベントが開催できない ← これも緊急事態宣言下で対処できない
・納品先の飲食店が営業中止 ← 自分が決定できない、相手が決定すること

つまり自分ではどうしようもないこと、自分の課題ではなく他者の課題であることがいくつも浮かび上がってきたのです。

 

近年、「嫌われる勇気」で広く名前が知られるようになった心理学者のアルフレッド・アドラーは「課題の分離」を提唱しています。

選択の結末を最終的に引き受けるのは誰か? を考えて、自分の課題と、他者の課題とを分ける。

例えば、勉強するのは子ども自身の課題。代わりに宿題をやってあげるというのは、他者の課題に土足で踏み込む行為になります。勉強しなさいというのも、実は自分が世間体を良くしたいという自分の課題を押し付けている場合が多い。子ども自身が課題に立ち向かうのにいかに適切な支援をするか? というのが大人側の課題になってきます。

 

野口ファームさんではこのように考えました。

・コロナ ← 選択の余地がない
・農業イベントが開催できない ← 緊急事態宣言は、自分一人ではない県や政府を含めた課題
・納品先の飲食店が営業中止 ← 相手の飲食店の課題

特に、飲食店の休業は相手が命を賭けて選択した苦渋の決断。ここに自分が介入する要素は少ないのです。

それなら上記のことは現在の自分の課題ではない、自分が考える仕事から外すという切り分けができます。

 

すると自分たちにとって最も大きな課題はコロナではなかった!

「時間の余裕がないから、必要な商品開発やPRができていない」ということに行き着きました。

課題を分離できると、もうコロナのニュースを必要以上に気にする機会が減ります。自分たちを必要とする人たちが必要とする商品に注力し、作業を選別して集中することもできます。

大きなたまねぎはSNSなどの拡散で全国に売れることになりました。

 

 

仕事の選別をするのに数字を使って意思決定する方法もあります。しかし非常時、大変な時は数字が急減したりして今までの数字の分析が役に立たないことも多い。思考もぐちゃぐちゃに混乱しやすい。

そんな時に「課題の分離」を使って、自分の課題か他者の課題か?とシンプルに2分割すると、ボトルネックが通りやすくなります。

 

私は個人的に家族間ではもっと平易な言葉を使っています。

「それはこちらのこと?」「あちらのこと?」

こんなふうに問いかけてみると、周囲の人と考えが共有しやすいかも知れませんね。

課題の分離で、多くの人が重荷を降ろしていきますように!

 

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投稿者プロフィール

Shigeo Morimoto
Shigeo Morimoto
1966年大阪市生まれ。革新の好循環を起こす「プロの素人」。株式会社こきょう 代表取締役。「教えない」企業研修で何故か良くなってしまう。そのためにTOC(国際認定ジョナ資格)、MG(西研究所認定インストラクター)、20年のEC業界経験で築いたご縁と、大学で河合隼雄氏に学んだ臨床心理学を駆使。

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